合気道は意味ない?弱いと言われる理由と護身術としての価値

合気道の円の動きを使い、体捌きによって相手を投げる稽古

合気道について調べていると、「意味ない」「弱い」「やらせ」といったネガティブな言葉を目にすることがあります。

また、合気道の達人と呼ばれる人が格闘家との対戦で苦戦する映像などをきっかけに、「合気道は実戦では使えない」と考える人もいるのではないでしょうか。

しかし、総合格闘技で通用するかどうかだけで、合気道の価値を判断してよいのでしょうか。

本記事では、総合格闘技(MMA)やレスリングに取り組み、剣護身術の指導にも携わっている筆者が、自身の経験をもとに合気道の価値について考えていきます。

なお、私は合気道そのものを習った経験はありませんが、その源流の一つである大東流合気柔術を稽古で学んだ経験があります。
合気道の技術や強さを評価する立場ではなく、異なる武術や格闘技を学んできた一人として、感じていることをお伝えできればと思います。

目次

合気道はなぜ「弱い」「意味ない」と言われるのか?

結論から言うと、私は合気道が意味のない武道だとは考えていません。

「合気道は弱い」という評価には、そもそも武道の価値を判断する基準や、想定している状況の違いがあるのではないかと思います。

総合格闘技(MMA)の強さだけで判断していいのか?

合気道が意味ないと言われる理由
  1. 総合格闘技などの実戦的な格闘技では通用しない
  2. 決められた動きを繰り返す型稽古が中心で、自由な攻防の中では技を使えない

後者については、私自身もMMAやレスリングを経験する中で、相手が抵抗する状況で技を使う練習の重要性を強く感じています。

しかし、MMAで通用しないからといって、合気道そのものに価値がないとするのは、一方的な判断ではないでしょうか。

そもそも、MMAは実際の暴力をそのまま再現したものではありません。

MMAと実際の暴力の違い

共通点
  • 打撃、投げ、寝技などの何をやってくるかわからない怖さ
  • 抵抗する相手との攻防
  • 本気で殴ってくる相手への恐怖心と緊張感
  • 距離感やタイミングの重要性
違い
  • 整備された掲示やリング
  • グローブの着用
  • ルールや時間の定め
  • いつ始まるかわからない
  • 武器を持っているかもしれない

しかし、MMAの試合で勝つことと、武道として何を追求しているかは必ずしも同じではありません。

少し極端な例ですが、大谷翔平選手にサッカーボールでホームランを打ってみろと言って、その結果だけで野球選手としての能力を評価するようなものではないでしょうか。

合気道とMMAには対人攻防という共通点はあれど、ある競技のルールで結果が出せないことと、その武道に価値がないことは別の話だと考えています。

合気道と格闘技では、そもそも目指すものが違う

合気道には、相手と争うのではなく、調和を大切にする考え方があります。

例えば、合気会では相手との勝敗を決める試合を行わず、互いに技をかけ合う稽古を通じて心身を鍛えています。

一方で、合気道にはさまざまな流派や団体があり、組手や試合を通じて技を磨いているところもあります。

つまり、合気道と一口に言っても、稽古の方法や重視するものは一様ではありません。

MMAと合気道の装備、稽古環境、目的の違いを6マスで比較したイラスト

また、護身術として考えた場合にも、相手を倒すことが必ずしも目的になるわけではありません。

危険を避け、必要に応じて攻撃をかわし、安全な場所に逃げられれば、それも身を守ることに成功したと言えます。

もちろん、合気道を学んでいれば突然の攻撃に必ず対応できるというわけではありません。

合気道が大切にしている考え方や稽古の目的を理解せず、MMAでの勝敗だけで価値を判断するのは適切ではないと感じています。

合気道にはどんな価値があるのか?

私は合気道の魅力は、勝ち負けだけではなく、相手の力を利用する考え方や、身体をしなやかに使う技術にもあると思っています。

レスリングにもある、相手の力を利用する考え方

相手の力を利用するという考え方は、合気道だけにあるものではありません。

私自身、レスリングの先生から「相手の力の流れに逆らわず、その波を大きくして崩していく」という指導をいただくことがあります。

相手が押してきた力や動き始めた方向を利用し、自分が力任せに動かそうとするのではなく、相手の動きを崩しにつなげていく考え方です。

これは、合気道が大切にしている相手の力を利用するという考え方にも通じるものがあると感じています。

また、打撃においても相手の反応を利用することは重要です。

例えば、自分の攻撃に対する相手の反応を見て、次の攻撃につなげることも、相手の動きを利用する一つの方法です。

もちろん、レスリングやMMAと合気道では具体的な技術や身体の使い方は異なります。

相手の力や動きを利用するという考え方には共通する部分があり、合気道が追求している考え方は、ほかの格闘技にも通じる奥深いものだと感じます

実際に技を受けて感じた「引っ張る」と「導く」の違い

私は合気道そのものの稽古経験はありませんが、合気道の源流の一つである「大東流合気柔術」を稽古で体験したことがあります。

その際、先生から教えていただいたのが、自分の腕と相手の腕を一本のものとして考えるという身体の使い方でした。

自分と相手を別々に動かすのではなく、相手の力や動きに合わせながら、体捌きによって相手を自然に導いていきます。

その中で特に印象に残ったのが、外から見ると同じような動きをしているのに、技を受けたときの感覚がまったく違うことです。

技がうまくかかっていないときには、腕や身体を無理に引っ張られているような感覚があり、こちらも抵抗する力が生まれます。

一方で、熟練した先生から技を受けたときには、相手の動きに自然と導かれるように、身体が崩れてしまうのです。

腕の力で相手を引っ張る動きと、体捌きで相手を導く動きを比較したイラスト

例えるなら、誰かと手をつないで歩くとき、急に腕を引っ張られると抵抗したくなりますが、声をかけ合いながら一緒に歩けば、自然と足が進むような感覚に近いと思います。

実際の技術はもっと複雑ですが、力ずくで相手を動かすことと、相手の動きに合わせて導くことには、大きな違いがあると感じました。

そして、これほど繊細な身体操作を身につけるには、相当な稽古と経験が必要なのだと思います。

合気道そのものの技術を経験したわけではありませんが、大東流合気柔術を学んだことで、相手と調和して崩すという考え方の奥深さを実感しました。

受け身など、身体をしなやかに動かす稽古の魅力

私が合気道に魅力を感じているもう一つの理由が、身体をしなやかに使う稽古です。

特に印象的なのが、受け身や膝行(しっこう)といった動作です。

特に「膝行」は大東流合気柔術の稽古で初めて知りました。

簡単に言うと、膝立ちに近い姿勢で前に進んでいく動作ですが、実際には足首や股関節などを連動させながら身体を動かします。

これが思っていた以上に難しく、足首や身体をうまく使えなければ、スムーズに進めません。

合気道の前回り受け身と膝行の動作を紹介するイラスト

普段、椅子に座って仕事をする時間が長い人にとっても、日常生活ではあまり行わない身体の動きを経験できるのは魅力だと思います。

こうした動きは見ているだけでも美しく、しなやかさや滑らかさを追求する姿には、日本の伝統武道ならではの魅力があります。

合気道には、護身術や格闘技としての強さだけでなく、身体を養い、武道の奥深さを楽しむ価値があります。

合気道は護身術として使えるのか?

ここまで合気道の価値についてお伝えしてきましたが、護身術として考えた場合はどうでしょうか。

護身術で最も大切なのは、そもそも危険な状況に遭遇しないことです。

しかし、今回は実際に相手から攻撃されたとき、身を守るための技術として使えるのかという視点で考えていきます。

私自身は、型稽古を中心とする合気道の技術や練習だけでは、現在起こり得るさまざまな暴力への対応は難しい場合があると考えています。

ただし、合気道の中には実際の攻防を重視した稽古を取り入れている団体もあり、合気道全体について同じことが言えるわけではありません。

その違いも踏まえながら、MMAやレスリング、護身術の経験から考えていきます。

実際の暴力と合気道の技にはどんな違いがある?

合気道の稽古では多様な攻撃に対応している
  • 手首をつかむ
  • 正面からの手刀で打つ
  • 斜めからの手刀打ち
  • 正面から突く
  • 胸ぐらを掴む
  • 後ろ襟を掴まれる

合気道の稽古では多様な攻撃に対応していますが、現実の暴力では、必ずしも型通りの動きが起こるとは限りません。

例えば、手首や胸ぐらをつかまれた後、そのまま引っ張られたり、押されたり、殴られたりすることも考えられます。

また、パンチが一発で終わるとも限りません。

連続したパンチや蹴り、タックル、互いに組み合うような状況など、攻撃の方法はさまざまです。

パンチ、背負い投げ、頭突き、刃物、複数人、奇襲などの攻撃例を示したイラスト

私自身、MMAやレスリングに取り組む中で、相手の攻撃や反応によって状況が次々に変わっていくことを経験しています。

そのため、決められた攻撃への対処を覚えることと、変化し続ける相手に対応できることは、別の技術だと考えています。

これは合気道の技術に問題があるという話ではありません。
基本となる技術を学ぶための稽古と、さまざまな攻撃に対応するための稽古では、目的が異なるということです。
合気道であっても、実際の攻撃を想定した練習を重ねることで、培った技術を護身術に活かせる可能性はあると思います。
大切なのは、自分が想定する危険に対して、どのような練習をしているのかということではないでしょうか。

突然の攻撃や抵抗する相手に対応するための練習

もう一つ重要だと感じているのが、相手が抵抗する状況での練習です。

実際に襲われる状況では、相手がどのように動くのか、どの技を使うのかを事前に知ることはできません。

また、こちらが技をかけようとすれば、相手も抵抗したり、別の動きに切り替えたりします。

MMAの練習でも、技の手順を理解していても、実際に相手が抵抗するとまったく同じようには動けないことがあります。

特に、相手のスピードや力、恐怖心が加わると、普段できていることができなくなる場合もあります。

護身術として技を使えるようになるには、決められた動きを繰り返すだけでなく、相手の抵抗や予測できない攻撃を想定した練習が重要だと考えています。

ただし、必ずしも激しい試合をする必要はありません。

安全に配慮しながら、相手の抵抗を少しずつ増やしたり、攻撃のタイミングを変えたりする練習でも、学べることはあります。

実際に、合気道の中にも覇天会や合気道S.A.、昭道館合気道など、組手や乱取りを取り入れ、自由な攻防の中で技術を磨いている団体があります。

もちろん、試合や組手を行えば、あらゆる暴力に対応できるようになるというわけではありません。

MMAで強い選手であっても、武器を持った相手や複数人からの攻撃など、普段経験していない状況では対応が難しくなることがあります。

どのような武術や格闘技であっても、想定する条件と練習内容は重要です。

型稽古で身につけた技術を、異なる条件の中で試し、さらに理解を深めていくことにも武術の楽しさがあると思います。

合気道に通じる技術を護身術に活かす剣護身術

ここまで合気道の価値や護身術としての可能性についてお伝えしてきました。

私が指導している剣護身術にも、合気道と通じる身体の使い方や考え方があります。

剣護身術は合気道から派生した武術ではありません。 両者は異なる武術ですが、技術を学んだルーツの一部に共通点があります。

ここからは、その歴史的なつながりと、剣護身術ではどのように護身術として活かしているのかをご紹介します。

合気道のルーツとなった武術を剣護身術でも学んでいる

合気道の成立に大きな影響を与えた武術に「大東流合気柔術」があります。
合気道の開祖である植芝盛平は、大東流合気柔術の武田惣角から教えを受け、その技術を学びながら後の合気道を形づくっていきました。

実は、剣護身術でもこの大東流合気柔術から大きな影響を受けており、相手の力を利用する考え方や身体の使い方を取り入れています。

つまり、合気道の技術を剣護身術に取り入れたということではなく、合気道と剣護身術は異なる武術でありながら、大東流合気柔術という共通するルーツの一部を持っているということです。

技の構成や練習方法、目的はそれぞれ異なりますが、身体の使い方や相手の力を利用する考え方には通じる部分があると感じています。

剣護身術ではその技術をどのように活かしているのか?

剣護身術では、相手の攻撃を体捌きによってかわしたり、相手の力や動きを利用して崩したりすることを大切にしています。

例えば、旋転技法と呼ばれる技術では、身体を回転させる円の動きを使って相手を崩し、投げにつなげていきます。

また、剣護身術には「青眼の構え」という基本となる構えがあります。

この構えから相手の攻撃に対応し、防御と攻撃を一体とした技術を使いながら、体捌きによって相手の力を受け流したり、旋転技法によって崩したりしていきます。

さらに、パンチや蹴り、組みつきなど、現代のさまざまな攻撃を想定した稽古も行っています。

相手が抵抗する状況や、攻撃が変化する状況での練習を通じて、こうした身体の使い方を護身術として活かすことを追求しています。

これは剣護身術が合気道より優れているという意味ではありません。

大東流合気柔術から学んだ相手の力を利用するという考え方を大切にしながら、現代の危険に対応するための技術として研究しているのが剣護身術です。

合気道を続けながら、護身術としても学びを深める楽しさ

私は、合気道で培った身体の使い方や相手の力を利用する感覚は、ほかの武術や護身術を学ぶ際にも活かせると考えています。

例えば、合気道を続けながら剣護身術を学ぶことで、パンチや蹴り、組みつきなど、これまでとは異なる攻撃に対して、自分が培ってきた身体の使い方を試すことができます。

もちろん、合気道の技がそのまま使えるとは限りません。

異なる条件で身体の使い方や技術を試してみることで、新しい発見が生まれるかもしれません。
そして、そこで得た経験を合気道の稽古に持ち帰ることで、これまで学んできた技術への理解がさらに深まることもあると思います。

合気道をやめたり、別の武術に置き換えたりする必要はありません。

合気道を続けながら、その経験を護身術としてさらに追求していく。

そうした新しい挑戦も、武道を学び続ける楽しさの一つではないでしょうか。

まとめ

合気道が「弱い」「意味がない」と言われる背景には、総合格闘技などの強さを基準に評価されていることもあるのではないでしょうか。

もちろん、実際に抵抗する相手に技を使えるかどうかは、護身術を考えるうえで重要なことです。

しかし、それだけですべての武道の価値が決まるわけではありません。

私自身、大東流合気柔術やレスリングを学ぶ中で、相手の力を利用することの奥深さや、身体の使い方一つで技の感覚が大きく変わることを実感してきました。

また、受け身や膝行などのしなやかな身体の使い方や、日本の伝統武道としての美しさにも大きな魅力を感じています。

一方で、実際の危険から身を守るためには、突然の攻撃や相手の抵抗など、さまざまな状況を想定した練習も大切だと考えています。

そして、合気道の中にも、伝統的な技術を大切にしながら、実際の攻防の中でその可能性を追求している方々がいます。

合気道そのものを経験したことがない私が、その強さや技術を一方的に評価することはできません。

それでも、異なる武術や格闘技を学んできた一人として、合気道が追求している考え方には、多くの学ぶべきものがあると感じています。

武道の価値は、一つの競技の勝敗だけでは測れません。

合気道を習っている方も、これから始めようと考えている方も、強いか弱いかという評価だけでなく、自分がその武道から何を学びたいのかという視点を大切にしていただければと思います。

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この記事を書いた人

剣護身術インストラクター|IGBA認定総合護身インストラクター|武道歴17年

剣護身術のインストラクターとして、護身術の指導に携わっています。

武道歴17年の経験と、IGBA認定総合護身インストラクターとしての知識、実際の指導経験をもとに、護身術について発信しています。

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