女性の護身術|好きなことを我慢せずに、自分を守るためにできること

「もっと自衛した方がいい」
「そんな場所に行かなければいい」
「その服装にも問題があるのでは?」

女性が何かの被害に遭ったとき、このような言葉を耳にすることがあります。

もちろん、自分の身を守るために危険を避けることは大切です。

しかし、護身のために好きな服を諦めたり、行きたい場所を避けたりして、生活を制限し続けることを誰が望むでしょうか。

私は、そういうものを護身とは呼びません。

護身とは、好きなことを我慢するためではなく、自分らしく生活するために、自分を守る選択肢を増やしていくことだと考えています。

今回は、普段からできる最低限の備えと、女性が護身術を学ぶ意味、そして危険な状況から逃げるために使える3つの技を紹介します。

目次

普段からできる最低限の備え

護身というと、相手に襲われたときに使う技をイメージする方もいるかもしれません。

しかし、実際には危険な状況になる前にできることもあります。

大切なのは、常に周囲を警戒して生活することではありません。
暗い夜道や人通りの少ない場所など、警戒した方がよい状況だけでも行動を少し変えることです。

例えば、

  • 暗い夜道や人通りの少ない場所では、歩きスマホをせず周囲を確認する
  • イヤホンを使う場合も、警戒した方がよい場所では外す
  • 普段歩きながら音楽を聴くのが好きな方は、片耳だけにするなど周囲の音が分かる状態にする
  • 防犯ブザーやスマートフォンは、必要なときにすぐ使える場所にしておく
  • 不安を感じたときに逃げ込めるコンビニや店舗、人のいる場所を意識しておく

といったことです。

犯罪を防ぐうえでは、「どんな人が狙われるか」だけではなく、犯罪が起こりやすい場所や状況を知っておくことも大切です。

また、夜道で「後ろから誰かについてこられているかもしれない」と感じた場合の対処については、別の記事で詳しく紹介しています。

好きな服を着たり、音楽を聴いたり、行きたい場所へ出かけたりすることまで諦める必要はありません。

普段の楽しみを減らすのではなく、場所や時間帯に合わせて少しだけ備え方を変える。

それだけでも、自分を守るためにできることは増やせます。

女性が護身術を学ぶ意味はある?

「女性が護身術を学んでも、男性との力の差があるなら意味がないのでは?」と思う方もいるかもしれません。

確かに、体格や筋力に大きな差がある相手と正面から力比べをすれば、女性が不利になる場面はあります。

ですが、護身術の目的は相手と戦って勝つことではありません。

危険を感じたら、まず逃げることが第一です。

ただし、実際には相手に近づかれている、進路を塞がれている、身体を掴まれているなど、すぐに走って逃げられない状況もあります。

そんなときに、相手を倒すのではなく「逃げるための選択肢」を増やすことが、護身術を学ぶ意味の一つです。

何もできない状態から、距離を作る、相手の力を受け流す、掴まれた状態から抜ける。

そうした選択肢を一つでも持っておくことで、逃げるためのきっかけを作れる可能性があります。

研究でも自己防衛・護身教育には一定の有効性が示されている

「女性が護身術を学んでも意味がない」という考えに対して、参考になる研究もあります。

2024年に公表された女性向け自己防衛トレーニングに関するレビューでは、19件の研究を検討した結果、トレーニングを受けた参加者では、受けていない参加者と比較して、未遂・既遂の性的被害などが少なかったことが報告されています。[1]

また、カナダの大学生893人を対象とした研究では、危険の認識や言葉による抵抗、身体的な自己防衛などを学ぶプログラムを受けたグループで、1年間の既遂被害が9.8%から5.2%、未遂被害が9.3%から3.4%に低下しました。[2]

もちろん、これらは主に性的被害を対象とした研究であり、護身術を学べばあらゆる犯罪を防げるという意味ではありません。

それでも、女性が自己防衛の方法を学ぶことには、一定の有効性を示す研究があります。

逃げるために使える3つの護身術

ここまで紹介したように、護身術の目的は相手と戦って勝つことではありません。

危険な状況から離れるために、相手との距離を作ったり、接触をかわしたり、掴まれた状態から抜けたりするために使います。

相手を倒すためではなく、逃げるきっかけを作るための3つの護身術を紹介します。

絡まれた時に使えるパームガード

絡まれた時に安全な間合いを保ち、万が一接触された場合でも、最後まで対話や説得の余地を残しながら対応するための技が「パームガード」です。

パームガードは、相手の行動に合わせて3段階に分かれています。

1. 空間防御

相手と対峙した時は、相手の動きや武器を持っていないかを警戒しながら、いつでも逃げられるように間合いを保つことが大切です。

やり方
手のひらを相手に向けて、近づいてほしくないという拒絶の意思を示します。
この時、両手のひらの幅を10cm以内にして腕をしっかり伸ばすことで、相手との間に壁を作ります。
この状態で相手との距離を保ちながら、まずは説得を試みます。

2. 接触してきた場合

距離を取って説得しても相手がさらに間合いを詰めてくる場合は、相手の自由にさせず、先に相手の動きを抑えます。

やり方
相手の肘関節付近に自分の小指が触れる位置を目安に、手のひらで優しく触れます。
そこから腕を伸ばし、姿勢を保ちながら相手がそれ以上接近できないように抑えます。
姿勢は、重い台車を前に押す時や、倒れてくる棚を支えるようなイメージです。
可能であれば、相手が完全に近い間合いに入ってくる前に動きを抑えます。
相手を抑えた状態でも、再度説得を試みます。

3. 攻撃してきた場合

それでも相手が暴れたり、攻撃してきたりする場合は、3段階目の対応に移ります。

やり方
2の段階で触れている相手の腕を、左右交互に素早く押し込んでいきます。
交互に力を加えることで、正面から力比べをするのではなく、相手の姿勢を崩しながら押し返しやすくします。
相手の態勢を崩したり、壁際まで距離を作ったりできたら、その場に留まって戦おうとせず、逃げる・周囲に助けを求めるなどして危険な場所から離れましょう。

詳しい方法は以下の動画で解説していますので、ぜひご覧ください!

パームガードと同時に声を出せると、相手に「近づかないでほしい」という意思を伝えるだけでなく、周囲の人に異変を知らせて助けを求めることにもつながります。

ただし、実際に恐怖を感じた場面では声が出ないこともあります。声を出すことは有効な選択肢の一つですが、できなければ意味がないというものではありません。

ぶつかってくる相手への体捌き

駅や繁華街などの公共スペースで、わざと相手にぶつかる、いわゆる「ぶつかりおじさん」と呼ばれる行為が問題になることがあります。

特に体格の小さい女性にとって、体格差のある男性から故意にぶつかられることは、単に不快なだけでなく、転倒や怪我につながる危険もあります。

故意に身体をぶつける行為は、状況によって暴行罪にあたる可能性があり、それによって怪我をした場合には傷害罪が成立する可能性もあります。被害に遭った場合は、警察に相談することもできます。

とはいえ、まずはぶつかられて怪我をする前に、できるだけ安全にかわすことが大切です。

そこで使えるのが「体捌き」です。

やり方
やり方はシンプルです。
相手がぶつかろうとしてきたタイミングで、足を引く、もしくは相手を避けながら前に出て、身体を真横に向けるように反転します。
正面から相手を受け止めるのではなく、身体の向きを変えることで、素早くシンプルな動きで相手をかわします。

詳しい動きは、以下の動画を参考にしてください。

手首を掴まれたときに外して逃げる

絡まれたり、連れ去ろうとされたりする中で、強い力で手首を掴んで引っ張られることも考えられます。

そのまま相手の力に引っ張られてしまう前に、まず掴まれた手を外して逃げられる状態を作ることが大切です。

ここでは、体格差のある相手に掴まれた場合でも外しやすくするための方法を2種類紹介します。

※右手を掴まれた場合を例に説明します。

1つ目の方法

  1. 右手を掴まれたら右足を前に出し、左手で自分の右手を掴んで両手を組んだ状態にします。
  2. 手のひらを相手に向けるようにしながら、両手を外側へ大きく回して掴みを外します。

この時は、腕だけで回そうとするのではなく、背中から大きく回すようなイメージで身体を使います。

2つ目の方法

  1. 1つ目と同じように右足を前に出し、左手で自分の右手を掴んで両手を組みます。
  2. 前に出ながら、自分の肘を相手の肘に当てるように動かして掴みを外していきます。

どちらも相手と力比べをするための技ではなく、掴まれた状態から抜けて、その場から逃げるための方法です。

こちらも動画で詳しく解説していますので、ぜひ実際の動きを確認してみてください。

今回紹介した3つの技だけで、あらゆる状況に対応できるわけではありません。

また、実際に危険を感じたときに咄嗟に身体を動かすには、知識として知っているだけでなく、実際に人を相手に練習しておくことも大切です。

剣護身術では、今回紹介した動き以外にも、さまざまな状況を想定した護身術や、より本格的な武術の技や身体の使い方を学ぶことができます。

自分を守るための選択肢をもっと増やしたい方は、ぜひ実際に身体を動かしながら体験してみてください。

まとめ|我慢するのではなく、自分を守る選択肢を増やす

自分を守るために、好きな服を諦めたり、行きたい場所を避けたりして、やりたいことを我慢する必要はありません。

暗い夜道や人通りの少ない場所など、警戒した方がよい状況では少し行動を変える。
そして、それでも相手に近づかれたり、掴まれたりしたときのために、逃げるための方法を知っておく。

護身とは、自分の生活を狭めることではなく、自分を守るための選択肢を増やしていくことです。

今回紹介した護身術も、その選択肢の一つです。

好きなことを楽しみながら、自分を守る力も少しずつ身につけていきましょう。

実際に護身術を身につけてみたい方は、剣護身術の体験もぜひご活用ください。

参考文献

[1]Johnson AM, Cole BS. Self-Defense Training to Reduce Violence Against Women and Girls: An Integrative Review. Journal of the American Psychiatric Nurses Association. 2025;31(1):23-45.
SAGE論文ページ Sage Journals

[2]Senn CY, Eliasziw M, Barata PC, et al. Efficacy of a Sexual Assault Resistance Program for University Women. New England Journal of Medicine. 2015;372:2326-2335.
NEJM論文ページ

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この記事を書いた人

剣護身術インストラクター|IGBA認定総合護身インストラクター|武道歴17年

剣護身術のインストラクターとして、護身術の指導に携わっています。

武道歴17年の経験と、IGBA認定総合護身インストラクターとしての知識、実際の指導経験をもとに、護身術について発信しています。

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